Product Description
誰にも定義されなかったアフリカを歴史・国家・宗教・食・音楽の視点で大解剖
──エチオピアという“独立した文化圏”を旅する。
アフリカの角、エチオピア。植民地にならなかったこの国は、独自のリズムと音階、教会の祈り、そしてジャズを混ぜ合わせながら、国民性と政治、記憶と抵抗を音楽で語ってきた。なぜこの国では、産業よりも“魂”が音楽を動かしてきたのか。国歌、エチオ・ジャズ、現代のディアスポラまで、過去と未来が交差する音の旅へ。
ムラトゥ・アスタトゥケが生み出したエチオ・ジャズから、若手アーティストが躍動する現代の音楽シーンまで、“魂のインフラ”としてのカルチャーが生きている国、エチオピア。そのユニークさは「アフリカらしさ」では語りきれない、“文化の孤島”のような深みと重みがある。本レッスンでは、音楽・信仰・社会・身体を横断しながら、誰にも定義されなかったこの国のカルチャーを学びます。
🎶 特長
・先生と生徒の会話形式で、読みやすくテンポよく学べる
・クイズ付きで知識だけでなく“思考”としての学びが残る
・年表や音楽理論では触れられない、“なぜその音が鳴ったのか”を深堀り
・実在スポットやレコード、ローカルカルチャーまで網羅する現場感のある体験
🎻 このレッスンで得られること
・「音楽を聴く」ではなく「音楽で考える」感性が育つ
・エチオピアという国の歴史の深さ・個性を学べる
・自分の“耳”と“日常”に新しい軸が宿る
🎹目次
【国家と音の美学】
「国を奏でる旋律」——エチオピア国歌と“音の政治”
アフリカ唯一の長期支配を逃れた国
エチオピアの近代化とエチオジャズ
【エチオピアの音楽産業や食文化】
「手で食べ、香りで祈る」——分かち合いの食文化と“神に近づく味覚”
"エチオピアの音楽の"今"
文化の背景と深層
【メディア】
参考音源・スポット紹介
🎺概要説明
【国家と音の美学】
- 「国を奏でる旋律」——エチオピア国歌と“音の政治”
国歌が“理想”を奏でるなら、エチオ・ジャズは“現実”を鳴らす。ムラトゥ・アスタトゥケが創始したこの音楽は、アメリカのジャズとエチオピアのケネート音階を融合し、土地と記憶、郷愁と祈りを音に封じた。彼の軌跡は、音楽で国を再構築しようとしたひとりの芸術家のものでもあり、セラシエ皇帝による文化政策——音楽学校、交響楽団、国営ラジオ──と呼応しながら進んでいった。“音で国を設計する”という思想が国家の骨格となったエチオピア。その歴史を、旋律、教育、インフラの側面から多角的に探る。音楽が国家ビジョンの中核だった時代へ。
本レッスンでは、国歌に込められた政治メッセージと文化の多様性、そして旋律がつなぐ“理想の統一”を読み解く。国歌とは、国家とは、誰のための音なのか? 音で語る政治とアイデンティティの深層へ。
【エチオピアの音楽産業や文化】
- 「手で食べ、香りで祈る」——分かち合いの食文化と“神に近づく味覚”
エチオピアの食卓には、思想が盛られている。発酵クレープ「インジェラ」を皆でちぎり、手で食べる——そこには言語を超えた共同体のリズムがある。「グルシャ」と呼ばれる、相手の口に食べ物を運ぶ仕草には、信頼や愛のすべてが込められている。また、宗教的背景が強く反映されたベジタリアン文化や断食の美学は、“何を食べるか”ではなく、“なぜ食べるか”を問う精神の姿勢だ。さらに、コーヒー発祥の地とされるこの国では、「カリオモン」という儀式的なコーヒーセレモニーが日常を包み込む。
エチオピアの音楽は今も“共有される祈り”として生きていて、商業的なレーベルやチャートが未整備な中でも、教会、地域ラジオ、クラブ、そしてディアスポラのコミュニティの中で、音は絶えず響いている。1970年代の軍事政権下で多くの音楽家が亡命を余儀なくされた結果、“エチオ・ジャズ”の伝説は残ったが、継承の「線」は寸断された。
そんな独自の発展を遂げるエチオピア音楽の“未完の産業性”と“完成された精神性”を、記憶と未来の視点から探っていく。